大室勇一先生の名著、サクソフォーン教本を演奏動画を交えながら解説していきます。
全レッスン分をまとめて記載していますので、目次から必要なところを参照して練習に役立ててください。
また、動画やこの記事内では楽譜を表示しませんので、まだ持ってない方はこちらからどうぞ。
この本はサクソフォンを初めて触る人はもちろん、これから音楽を始めようという方も取り組めるように工夫されています。
初心者に必要な情報が網羅されていますので、まずはここから練習を初めて、この教本の後に各ジャンル用の教本に進んでもらうのが良いとおもいます。
私もレッスンの中でこの本を使用しています。
内容に反して価格は控えめな教本ですので、ぜひ1冊持っておいて欲しい教本です。
目次
Lessonに入る前の注意事項
実際の演奏方法や教本の進め方は、あくまで参考として使用してください。
初心者の方は、可能なら専門家のレッスンを受けられると上達も早く、確実だと思います。
独学で練習していく方はネット上の情報の他に、何冊か教本を購入して、目を通しながら練習していくことをオススメします。
それではLesson 1 からスタートしていきましょう。
Lesson1
レッスン1ではシの音から初めて、徐々に音を増やしていきます。
メトロノームを使いながら練習しましょう。
まずはシの音をしっかり出せるようにします。1つの音がしっかり出せるようになるとその後に出てくる音も出しやすくなると思います。
最初なので頑張って先に進みたくなるのは素晴らしいことですが、この後情報がどんどん出てきます。落ち着いてしっかりロングトーン(音を長く伸ばすこと)ができるようにしましょう。
また、楽譜を初めて読む方は、シの音が出せるようになったら次の動画のように歌って、その後楽器を演奏するようにしましょう。
手を叩きながら、音名を歌っていきます。
音の高さは変えずに棒読み状態で大丈夫です。
音の長さと音名だけは、しっかり確認しましょう。
楽器を演奏するといっても
- アンブシュア(演奏できる状態の口)を整える
- 呼吸に気をつける
- 演奏姿勢に気をつける
- 指遣いに気をつける
- 楽譜を読む
こういう処理を同時にしています。
新しいことだらけで、混乱してしまうことが多いので、まずは楽譜をしっかり確認。
そして演奏姿勢を確認して、演奏に入るといったように、一つずつ確実に進めていきましょう。
特に 1-6 から1-10 はしっかり練習していきましょう。最初が肝心です。
Lesson2
ここではタンギングが登場します。
タンギングは必須のテクニックなので、このレッスンで基本的な型をしっかり習得しましょう。
また、タンギングは非常に奥が深いので、このレッスン2が終了した後も、日々の基礎練習としてこのレッスンに戻ってくることをオススメします。
個人的な感覚ですが、タンギングは何時間も練習したら急激に上手くなる!というテクニックではなく、コツコツやって気がついたら上達していたという類のテクニックかなと思います。
気長に、しかし確実にやっていきましょう。
憧れの奏者の演奏をタンギングを意識して聞いてみるのも良いと思います。
ジャンルごとのニュアンスの付け方の違いや、種類の豊富さに気づけるのではないでしょうか。
また、後半ではブレス記号が初めて登場します。
練習ですので、このブレス記号はしっかり守るようにしてください。
ブレスの前後には、いろんな動作が必要になります。
- 演奏している
- 音を止める
- 息を吸う
- アンブシュアを整える
- 演奏を再開する
上手く吸えない場合や、テンポに遅れてしまう場合はどこかが上手くいっていないと思いますので、確認してみましょう。
Lesson3
新しい音が増えてきます。
指遣い自体はシンプルですが、楽譜を読むのが少しずつ大変になってくるので、しっかり確認しながら練習していきましょう。
楽譜が読みにくく、混乱するようでしたら、Lesson1 で紹介した「歌→楽器」の流れで練習してみてください。
また、スラーの切れ目ではタンギングをします。
息継ぎはブレス記号のあるところだけにして、しっかり長く吹けるようにしていきましょう。
そして、クロスフィンガリングも登場してきます。楽器の特性上、難しい動きになるので、演奏しにくいところです。
しっかり自分の音を聞いて、他の音が混ざっていないか、滑らかに繋がっているかを確認しながら練習してみてください。
Lesson4
レッスン4では♯・♭が登場します。
ピアノでは隣の黒鍵に移動する形になり、わかりやすいですが、
サクソフォンでは特殊な指遣いになっているので、確認していきましょう。
臨時記号と調号の違いも理解しておきたいところです。
動画を見ながら自分の音があっているか確認してみてください。
Lesson5
レッスン5ではオクターブ・キィが登場します。
譜読みも大変になってきますが、混乱するならLesson1で紹介した「歌→練習」の手続きを踏むようにしてください。
また、7番の a b c の練習は非常に重要な練習です。
時間をかけて、滑らかにできるようにしましょう。
Lesson3 で出てきたクロスフィンガリングと同じように、楽器が苦手いしている動きです。
しかし、それと同時に楽器が良く鳴る音域でもあるので、曲の練習をしていくと非常に良く出てくる動きです。
最小限の動きでできるように、左手の親指の位置には注意して練習していきます。
休符やブレス記号、スラーやタンギングする場所など、楽譜の指示はしっかり守っていきましょう。
Lesson6
レッスン6はこれまでの総復習です。
ヘ長調とト長調は頻繁に出てくる調なので、覚えられる人は覚えてしまいたい…くらい重要な練習です。
教本には何曲か短い曲が記載されているので、ゆっくり練習していきましょう。
また、8番の練習は音階練習の変形版で、中上級者が良く取り入れている練習の一つとなっています。
Lesson7
レッスン7では低音域を練習していきます。
出しにくい音も多いと思いますが、吹き方を大きく変えて低い音を演奏してしまうと、いざ曲の練習となった時に他の音域と滑らかに繋がらないので、奏法は安定させて取り組みましょう。
ほっぺたを膨らませたり、口を緩めたりはしないようにしましょう。
また低い音のタンギングも難しいところです。
中音域では「ターターター」のような発音と紹介されていましたが、ここでは「ダーダーダー」や「ドゥードゥードゥー」に近いシラブル音の方が演奏しやすいかもしれません。
後半で「中音域のド#」「ハ長調」「ニ長調」の練習が出てきます。こちらも合わせてしっかり確認していきましょう。
Lesson8
徐々に高い音や#と♭の音が増えていきます。
ここまでくれば、解説も少なくて大丈夫でしょうが、混乱したら「歌→演奏」の鉄則は変わらずにいきましょう。
後半ではシ♭の変え指が登場します。
今はまだ「あれ?これどっちでも良くない?」と思われる方もいらっしゃると思いますが、この変え指も重要なテクニックなので、まずは楽譜に書いてある通りの運指で演奏できるようにしましょう。
サクソフォンには沢山の変え指が存在し、このシ♭はその中でも代表するくらい役に立つ変え指ですが、実は実際に使用できている人は思ったより少ないのかなと感じています。
曲を演奏しよう!と思って買ってきた楽譜を広げた時に、変え指の指示は書いてありません。
吹きたくてしょうがなくて、とりあえずいつもの指で練習を始めるけど、実は効率の良い運指ではなかったということなのかなと思っています。
私は、今でも演奏する時に楽譜に「こっちの指で演奏する」と書いていることは結構あります。
ある程度練習してから運指を変更するのは難しいので、今回のL・Rのように最初に運指を選んで楽譜に書いておくと、スムーズに演奏できるのかなと思います。
Lesson9
八分音符が登場します。慌てず・転ばず・正確に練習していきましょう。
タンギングをする・しない、ブレスの場所なども忘れずに。
9番ではアウフタクトが登場します。
1拍目から始まらないことに注意して取り組んでみてください。
また、ブレス記号が小節線の場所じゃないところにあるのも要注意です。
ブレス記号の後のメロディーもアウフタクトから始まるメロディーになるので、合わせて確認していきましょう。
Lesson10
レッスン10は付点四分音符を勉強していきます。
付点四分音符が難しいのと合わせて、その次の音のタイミングが取りづらいので、正確に演奏できるようにしましょう。
練習に入る前にリズムだけ確認してからレッスンに入ってもらってもいいと思います。
楽譜の指示が増えてきて、強弱やクレッシェンドやデクレシェンドなど情報山盛りですが、混乱したら・・・あとはもうわかりますね?笑
左手の小指も初登場です。右利きの人は特に演奏しづらい指なので、繰り返し練習して滑らかに演奏できるようにしていきましょう。
Lesson11 と Lesson12
拍子の練習が2回続きますので、まとめて書いていきます。
Lesson10 までは1拍は四分音符で固定でしたが、1拍が四分音符じゃない場合もあります。
特に 6/8 拍子では八分音符が1拍だったり、付点四分音符が1拍だったりと曲によって違ってくるので、その都度確認して演奏するようにしましょう。
いくつかは動画にも参考のテンポを表示していますので、確認してみてください。
楽譜の基本的なルール(長さとか、スラーとか、ブレスとか)が変わるわけではないので、落ち着いていきましょう。
また、レッスン11の4番ではシ♭があります。これは L で演奏しますか? R で演奏しますか?
決めかねる人は p.48 に戻って確認してみてください。
Lesson13
音域をどんどん拡大していきます。
このレッスンが終わればサックスの音域のほとんどを習得したことになりますので、頑張っていきましょう。あと一息です。
運指がわかりにくい場合は巻末の運指表で確認して練習していきますが、左手の1 2 3のキィは特に間違えやすいので注意しましょう。
左手の親指に近い順番で、1 2 3 になっています。
将来的には他の音域と滑らかに繋がるようにしたいので、大きく構え方を変えずに操作したいキィです。
1 のキイは人差し指の根元付近、2 のキィは人差し指の第2関節付近、3のキィは中指の第2関節付近で操作します。
(指の関節は指先から順番に第1関節・第2関節・第3関節となっているそうです)
手の大きさや、楽器のサイズ、メーカーの違いによって多少変わってきますので、自分が演奏しやすい場所を探して演奏しましょう。
Lesson14
16分音符と付点八分音符は、中級者でも苦手にしている人がいます。
ここまでくればタンギング自体はできるようになっていると思いますが、このレッスンの16分音符を演奏するには、ある程度の早さでタンギングができないといけません。
もし動画のテンポで演奏することが難しければ、ゆっくりから始めて徐々にテンポを上げていくようにしましょう。
付点八分音符は特に正確に練習する必要があります。この後のレッスンで新しいリズムも出てくるので、ここでしっかり確認できているとより効果が出るはずですので、頑張りましょう。
いくつかは、シ♭が出る課題もありますね。L で演奏しますか? R で演奏しますか?
Lesson15
高音域が続きます。まずは運指をしっかり確認しましょう。
右手の4のキィは人差し指の第2関節あたりで操作します。レッスン13で出てきた左手の123と同様に手の大きさや楽器によって若干違ってくるので、良い場所を探してください。
後半ではシンコペーションが出てきます。
すごくすごくすごく、いろんな曲で出てくるのでしっかり抑えておきましょう。
Lesson16
きました。3連符。
どうしても難しい!と感じる人も出てくると思いますが、焦らずにいきましょう。
実は苦手な人は結構います。
リズムがわからなくなってしまう人は、歌ってみましょう。サクソフォンの演奏はここまでやってこれたのだから、きっと大丈夫です。
リズムさえ理解できればすぐに演奏できるようになります!
…あ、シ♭ありますね。ということは?
Lesson17
スタッカートです。
スタッカートは、厳密にいうと「音と音の間に隙間を開けること」を意味していて、その結果「音を短く演奏」しています。
基本のタンギングの上に成り立つテクニックなので、タンギングがまだ上手くいかないなーという方は、このレッスンを始めるのはちょっと待ってみて欲しいです。
その場合は、このレッスンは置いといて先に進むか、このレッスンのスタッカートを無しにして、通常のタンギングの練習をするようにすると良いと思います。
この本のレッスンもあと少しです。焦る必要はありません、じっくり丁寧に練習していきましょう。
またレの変え指も登場します。
動画では音程を優先して、教本の最初に乗っている指ではない指で演奏してますが、まずは教本通りの指で練習していきましょう。
変え指で演奏した場合、通常の運指の時と音色が大きく違ってきます。実際の曲の中では、動きの効率の良さと、音色の変化に気をつけて使用していきます。
pp の部分で使用したりすると、通常の指に比べて pp っぽくなるのでオススメです。
Lesson18
最後のレッスンです。最高音までの練習と、真ん中のド・ド# の変え指も勉強していきます。
最高音付近は流石に苦戦する人も多いと思いますが、口を締め過ぎたり、噛む力を強くし過ぎたりして演奏しないように気をつけましょう。
上のドの音あたりから順番に上がっていくと、出しやすいかもしれません。
このレッスンまでで、サクソフォンの基本的なテクニック、楽譜の読み方については必要な情報が揃いました。
まとめとして、巻末に乗っている小曲をいくつか練習してみてください。
音階練習
ここまで練習できたら、日々の基礎練習として音階練習を始めていきましょう。
音階の練習は非常に奥が深く、いろんなパターンがあったり、この本には載っていない調があったりします。
まずはこの本の音階練習がひと通りできるようになってから、専用の教本を買って取り組むことをオススメします。
音階の練習はプロの奏者も毎日のようにやっています。
私の師匠もめちゃめちゃ音階練習をする方でした。私も練習するときに何かしらの形で音階練習をしています。
音階練習が好きでたまらない!という方は多くないと思いますし、趣味で演奏している人は積極的にやりたい練習ではないかもしれません。
しかし、確実に上達に繋がる練習ですので、できれば毎回少しずつ挑戦していってみてください。
Reference Pieces
巻末の曲集です。
この教本の仕上げの曲集になるので、メトロノームは鳴らさずに演奏しています。
おおよそのテンポは表示していますが、これが正しいというのではなく、あくまで目安として考えるようにしてください。
シチリアーナ
楽譜に指示が色々書かれているので、演奏前にしっかり確認しましょう。
どういう風に吹きたいかしっかり音のイメージを作ってから演奏に入ることが上達への近道です。
シ♭が出てきていますが、この場合はどちらの指がよかったでしょうか?
迷った方は Lesson8 に戻って見てください。
バーレスク
スラーの場所、スタッカートの場所、テヌートの場所、それぞれしっかり守って練習しましょう。
強弱が交互に出てくるので、そのニュアンスが出せるとなお良いと思います。
動画では早めに演奏していますが、練習はゆっくり確実にできるテンポから始めると良いでしょう。
練習は、頭や体に演奏の癖をつけていくようなもので、最初は思うような早さで演奏できなくても、繰り返すうちに少しずつできるようになってきます。
辛い練習になるかもしれませんが、「ゆっくり・確実に」を繰り返して徐々にテンポを上げていくのが、1番の近道です。
サラバンド
ロンディーノ
グリーン・スリーヴス
「ソルヴェーグの歌」より
ヴァルトホルン・シュテュック
メヌエット
聖アントニーのコラール
最後に
以上で、大室勇一著:サクソフォーン教本の、私なりのお手伝いは終了になります。
奏者によって伝え方、考え方が違う部分もたくさんありますので、あくまで参考ではありますが、皆さんの練習に役立てていただけたら幸いです。
この教本を終了すると「テンポを限界まで落とせば」ほとんどの曲を演奏することができると思います。
実際にプロの奏者のように演奏するためには、反復練習をして、今は知識としてあるサクソフォンの演奏技術を、体に染み込ませ、考えなくてもできるくらいにしていくことが必要です。
基礎練習にコツコツ取り組みながら、自分の演奏したい曲にじっくり取り組んでみてください。
また、やりたい曲が難し過ぎて嫌になることもあるとは思います。
しかし、世の中の素敵な音楽は、作曲者やアーティストが自身の経験や知識をつぎ込んで作っているので、簡単に演奏してしまおうという方が失礼な話なのかもしれません。
楽曲や作曲者に敬意を評しつつ、楽しいサクソフォンライフをお過ごしください!